卵の中から自分で殻を突く嘴打ち(はしうち)が始まると、いよいよ、ヒナの誕生である。ふ化には早くても半日、長ければ丸一日かかる。手間取ると薄皮が乾燥し、羽が卵にくっついてしまい出づらくなるので、飼育スタッフは、時々、霧吹きで湯をかけて乾燥を防ぐ。あとは、親が給餌で卵から離れた隙に、穴の広がりが順調か、ヒナが動いているかといったことを確認するくらいで、見守るしかない。栄養を摂るための卵黄嚢がヒナの体に吸収されていないと危険なので、殻を割る手助けはできないのだ。ところが、ケルビンはおなかの下に卵を置いたまま体重をかけズリズリと転がす。他の個体では見られない行動で、ヒナを助けるためとはいえ、ケルビンだからなせる業なのだろう。