KANI
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カニプロジェクト
カニプロジェクト
投稿日:2024年12月26日

新記録!甲羅幅3.5㎝まで成長しました

水族館初、カニの育ての親を目指して

それは、成功率0.00…1%のチャレンジ。”松葉がに(ズワイガニ)”を、水族館で初めて卵から大人まで育てる「カニプロジェクト」。発足から7年でようやく、甲羅幅3.5センチまで育ちました。

カニプロジェクトのはじまり

ここ城崎・山陰地方でズワイガニは『松葉がに』と呼ばれ、地域を代表する貴重な水産資源です。そんな有名な松葉がにでも、卵から大人になるまで育てた人はほとんどいません。「どう成長するか、見てみたい」。きっかけは素朴な好奇心でした。

卵から私たちが食べる大きさ、漁獲可能サイズの甲幅(こうふく)10.5センチになるまで、およそ10年かかるといわれます。1匹のメスが1回に産む卵は、およそ5万粒。大人にまで成長する確率は限りなく0に近く、水族館ではまだ誰もできていません。

それは、成功率0.00…1%のチャレンジ。

私たちの飼育魂に火がつきました。

松葉がにを繁殖させ、大人になるまで10年間育てたとき、どんな発見があるのでしょうか?ゆかりのあるこの城崎で、皆さまと共にその成長を見守りたい。こうして『カニプロジェクト』が、2017年に発足しました。

稚ガニの誕生!でも、大きくならない…?

ズワイガニは孵化した時からカニの形をしているわけではなく、プレゾエア幼生→ゾエア幼生→メガロパ幼生の段階を経て小さななカニの形をした「稚ガニ」へと成長します。これまで幼生までしか成長させられず、まずは稚ガニの誕生へ向けて研究をはじめました。

先行研究を参考に細かな工夫を凝らした結果、2018年に初めて稚ガニの繁殖に成功します。約600匹の稚ガニが誕生しましたが、今度はなかなか大きくならないという課題に直面。成長しないばかりか、共食いや脱皮の失敗などにより個体数が減少していきました。こうして成功からわずか2年、すべての個体が死亡しました。

苦節7年、3.5センチの新記録。

大きく育てるにはどうすれば良いか?プロジェクトチームを中心に試行錯誤をはじめました。

まず取り組んだのは共食いの防止。1匹ずつプラスチックのケースに分けて飼育することとし、その様子はまるで「カニのアパート」。共食いは無くなりましたが、エサやりと掃除は1部屋ごとに手作業で行わなければなりません。チームメンバーを中心に毎日時間をかけて作業し、課題をクリアしていきました。こうして膨大な手間暇をかけ、生存率を高めることに成功します。

また、水温についても見直しを行いました。ズワイガニは成長段階によってより海底、低水温のエリアへ移動することが知られています。当園では他の甲殻類の飼育経験をもとに、高めの水温で飼育することでより早く成長すると考え試みていました。しかし、水温が高いことで脱皮間隔が短くなり、脱皮を繰り返してもなかなか大きくならないことが判明。2022年より大幅に水温を下げて、稚ガニの飼育を試みました。

こうした活動を続けてきた、2024年11月。プロジェクト発足から7年目でようやく、新記録となる甲幅3.5センチにまで稚ガニが成長しました。

カニのこと、話そう。

2024年7月、城崎マリンワールドの魚類展示エリア『SeaZoo』がリニューアルオープン。「もっと、会話のある水族館へ」をテーマに、地域性にこだわった展示にも力を入れています。

カニプロジェクトをテーマとした展示コーナーも増設され、当園で繁殖した稚ガニをお客様にご覧いただけるようになりました。

カニプロジェクトをテーマとした展示コーナーも増設され、当園で繁殖した稚ガニをお客様にご覧いただけるようになりました。展示するだけでなく、11月22日より販売を開始した『音声ガイド』では、担当の飼育員がカニプロジェクトの取組をより深くお話しています。

今後も継続してカニプロジェクトを進め、甲幅10.5センチの松葉がにを目指します。また育てたズワイガニがまた子供を産む、累代飼育にもチャレンジしていきたい。そんな取組のなかで見つけた物語をお客様にお話しできる、会話のある水族館を目指します。

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