投稿日:2025年10月22日

国際誌にトドのカナタの論文が、初めて掲載されました

2025年10月3日に、トドのカナタの研究論文が国際電子ジャーナル「International Journal of Comparative Psychology」に掲載されました。トドのカナタに関する研究としては初めての論文で、当園のトドの研究に関する国際論文では4本目となります。(掲載論文はコチラ


概 要

授乳期のトド仔獣 (Eumetopias jubatus) における視覚—音声コマンドを用いた連合学習の事例研究

本研究の目的は、授乳期のトドの仔獣がヒトのコマンド(視覚および音声コマンド)と動作の連合を学習できるかについて調べることであった。

オスのトド・カナタは生後 36 時間の時点から人工哺育を施された。私たちはカナタが生後 3ヵ月の時、ミルクを強化子として行動形成トレーニングを開始した。

約 3 ヵ月間のトレーニング期間に、カナタは 9 種類の動作を習得した。トレーナーはハンドシグナル(視覚のコマンド)とボーカルコマンド(音声のコマンド)を同時に提示することで、学習した動作とコマンドを条件付けた。

テスト段階では 3 つのコンディションにおいてコマンドと動作の連合学習の効果を調べた。ハンドシグナルとボーカルコマンドを同時に提示したコンディション 1 の成績は、ハンドシグナルのみを提示したコンディション 2 およびボーカルコマンドのみを提示したコンディション 3 よりも有意に高かった。また、コンディション 2 の成績はコンディション 3 の成績よりも有意に高かった。コンディション 1、2 においてカナタの成績はすべてのコマンドで安定していたが、コンディション 3 においてはほぼすべてのコマンドの成績が有意に低かった。

これらの結果は、トドの仔獣が視覚と聴覚双方のモダリティを用いてコマンドと動作の連合を学習できる卓越した連合学習能力を持つが、聴覚の情報に比べて視覚の情報が優位に連合学習されることを示唆している。


今後も、飼育下だから研究できるトドの能力の解明にチャレンジしてまいります。

*International Journal of Comparative Psychology

動物心理学や比較認知学を扱う学術誌です。受理されるためには、編集部による審査・専門研究者数名による査読をクリアする必要があり、新規性が重視されます。掲載が受理されたことで新たな発見と認められた事となります。

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